泣かずに読む

息子の小学校で続けてきた朝の読み聞かせが、3月12日の朝、最後を迎えました。

新学期でソワソワしていたり、夏休みや冬休み前で浮かれていたり、受験前でピリピリしていたり。

クラスの空気感や季節に合わせて選んできた沢山の絵本も、1週間後の卒業式を前にこれが最後の一冊です。

何を読もうかずっとずっと悩んで。

けさ、起きた時にこれしかないなと決めました。

私の専門である災害伝承・防災絵本の『ひまわりのおか』。

2011年3月11日。

息子のように卒業式を1週間後に控えた子どもたちも含め、74人の生徒と10人の先生が亡くなった大川小学校。

そのお母さんたちから、こどもに向けたお手紙を元にした絵本です。

プロとして失格ですが、私はこの絵本を読むたびに涙で詰まり、声に出して読み遂げられる自信がずっとありませんでした。

ましてや、我が子と、我が子のように接してきた子どもたちの前で。

絵本の中のお母さんは、ともすれば私だったかもしれない。

失われた命は、息子やお友達だったかもしれない。

でも、絵本の中でこんな一文があります。

「小晴は(中略)卒業式で はかまを着るのを、てれながらも、はずかしがりながらも、とても楽しみにしていました。
あと1週間だったのに…」

まさに、いまの我が子たちの状況です。

いま、彼ら彼女らに届けることこそ意味があると思い、読む決意をしました。

子どもたちはとてもとても静かに、じっと聞き入ってくれました。

「犠牲となった命を背負って生きていって、ということではないんです。
ただ、生きたかった命がそこにありました。みんなはこれからの未来をうんとうんと楽しんで、したいことを沢山してください。行きたいところに行ってください。」

そんなメッセージを添えて、教室を後にしました。

私自身も、いまを精一杯楽しんで生きます。

あなたもどうかお身体を大切に、したいことを先延ばしせず、力一杯楽しんでください。


「ひわまりのおか」
文 ひまわりをうえた八人のお母さんと葉方丹
絵 松成真理子
岩崎書店 2012年

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