防災士で絵本専門士の古賀涼子です。防災や災害伝承を描いた絵本について紹介している「えほんだより」、3通目は火山災害についてお便りします。
1991年6月3日に発生し、消防団員や報道関係者ら43人が犠牲となった雲仙普賢岳の大火砕流から34年。
当時、倒れた方の上に灰が降り積もり、人型となって浮かび上がった写真が新聞に掲載され、当時小学生だった私は大きな衝撃を受けました。
また、2014年9月27日に発生した御嶽山の噴火では58人が亡くなり、未だ5人が行方不明のままです。TOKYO FMの報道アナウンサーとしてこの報道に向き合う中、火山災害への呼びかけの難しさにも直面しました。
そして今、私たちが住む東京でも富士山の大規模噴火の影響が指摘されています。東京都は今年3月、「富士山が噴火したら…降灰に備える」というリーフレットを発行。最悪のケースの場合、都内の広範囲に2〜10cm程度の火山灰が降り積もる可能性があり、さまざまな被害や影響が想定されるということです。例えば上水道。水質が悪化したり、供給に支障が生じたりすることが。交通インフラは通行・運行が不可能となり、それによる帰宅困難者の発生も指摘されています。降灰+降雨が重なった場合は、停電や通信障害が発生する恐れも…まさに未曾有の事態です。
また、それらに備えた準備だけでなく、火山灰は呼吸器に大きなダメージを与えることもあるため、防災グッズとして防塵のマスクやゴーグル、スコップなどの清掃道具も必要になってきます。火山災害は地震や豪雨より発生確率は低いものの、ひとたび起きればこれまでの備えではカバーできないものも多い現実が。
そして、特に子どもたちは、全く身近ではない「火山」と言うものに得体の知れない恐怖を抱くことになるでしょう。
では、火山にどう向き合えば良いのでしょうか?
そんな時こそ、絵本が大きな助けになります。
大人にも子どもにもお勧めの1冊が「火山はめざめる」(作:はぎわらふぐ、監修:早川由紀夫、福音館書店 2019年)です。
噴火を繰り返してきた浅間山をモデルに、昭和時代・江戸時代・平安時代・2万5000年前と繰り返す噴火の中でどんなことが起きるのか、人々はどのような影響を受けてきたのか、火山地質学者である早川由紀夫さん監修の下で分かりやすく描かれています。火山の噴火といっても様々な事象があることを絵で直感的に理解できるので、あらゆる年代が共にページを開くことができるのがこの絵本の魅力です。
なお、絵本の解説ページで早川さんはこう記しています。「この絵本を読んで火山の噴火は恐ろしいと感じたかもしれません。しかし、噴火も自然の営みのひとつです。火砕流や土石なだれで破壊された土地は、長い時間をへて緑の森に変わり、交通の便が良いところには都市が建設されて、いまの美しい日本の国土ができました。」この事実をしっかりと受け止めた上で、備えにつなげていきたいですね。
また、富士山の成り立ちから、ともに生きる生物、噴火までをより詳しく知ることができる絵本が「富士山大ばくはつ」(かこさとし作、小峰書店 1999年)。
26年も前に描かれたものですが、工学博士でもあるかこさんの深い知識と滲み出る生命への想いに裏打ちされた、富士山をめぐる随一の絵本です。
小さなこどもたちには「あかんぼっかん」(ザ・キャビンカンパニー、偕成社 2018年)がおすすめ。
火山の営みを大きな赤んぼうに擬え、大暴れの一方で生み出される自然の素晴らしさを教えてくれます。年齢や発達に応じて、ぜひ3冊の中から最適なものを選んであげてくださいね。
それではまたお便りします。それまでどうぞお元気で。
古賀涼子













