防災や災害伝承を描いた絵本について紹介している「えほんだより」。今回は動物と災害をめぐる絵本についておたよりします。
あなたはペットを飼っているでしょうか?
最新となる2024年の調査で、全国の犬の飼育頭数は約 679万頭、猫は約 915万頭。合わせて約1,595万頭と推計されています。(一般社団法人ペットフード協会調査)
一方で、15歳未満の子どもの数は2025年4月1日現在で1,366万人。(総務省調査)子どもの数よりもペットの飼育数の方が多い現状です。
犬や猫以外の動物を飼っている方もいる中、ペットも大切な家族の一員として災害に備えなくてはならない現実が見えてきます。
また、飼育されている動物という点では動物園や水族館でも同じことが言えます。
では、実際に過去の災害では動物たちをめぐってどのようなことが起きたのでしょうか。それらを教えてくれるのが、今回ご紹介する絵本たちです。
まず1冊目は「ぼくは海になった 東日本大震災で消えた小さな命の物語」(作と絵:うさ くもん出版 2014年)
物語は海の上から始まります。人間のお母さんと共に大きな津波にさらわれた犬のチョビ。眠っているお母さんに何度も声をかけますが、起きてはくれません。そこでたえちゃんに知らせようと海を泳いで、なんとか家にたどり着きます。たえちゃんは変わり果てた家の周囲で、必死でお母さんとチョビを探していました。ところが、いくらチョビが服をくわえてひっぱっても大きな声で鳴いても、たえちゃんは全くきづいてくれません。実は、チョビも既に命を落としていたのでした。作中、亡くなったお母さんのそばに犬がいなかったかと尋ねるたえちゃんに、警察官はこう答えます。「どうぶつは、海で見つけてもそのままで…。つれてくることはしないんです」また、チョビやたえちゃんが行く先々で、猫や他の動物が『眠っている』姿が描かれます。自分の大切なペットがそのように犠牲とならないよう、備えをする大切さや命の重さをしっかりと感じることができる一冊です。巻末には実際に東日本大震災で命を落とした動物たちが描かれていて、どのような状況で亡くなったのかも知ることができます。ペットを飼っている方には涙なくして読めない絵本ですが、しっかりと受け止めるべき現実がたくさん詰まっています。
2冊目は「ラース 福島からきた犬」(文と絵:ブラザートム SDP 2012年)
アーティスト・俳優であるブラザートムさんの実話を元にした、力強く胸に響く素晴らしい作品です。原発事故の影響で動物たちを置いて避難せざるを得なかった福島県。原発の周りをうろうろしていて保護された大きな白い犬をトムさんは預かることになりました。保護したばかりの犬は傷だらけで汚くて変な臭いがしてうるさい「ぶさいくな犬」。でも、トムさんはすぐに友達になります。飼い主を探す中、葛尾(かつらお)村からやってきた「ラース」だと判明。すぐに引き取ることができない飼い主さんから託されたトムさんは共に過ごす中で、ページの最後にこう綴ります。「ねえ、ラース、福島にかえれる日はくるんだよね?」この本が出版されたのは震災の翌年。当時の先が見えない不安や、それでも未来を信じる気持ちがトムさんの言葉やラース、他の保護された犬たちの様子から伝わってきます。一方で、震災からまもなく15年が経とうとする2025年12月末現在、福島県では未だ7市町村が帰還困難区域のまま。ラースのいた葛尾村の一部も含まれています。ラースやその他の動物たちはその後、福島に帰ることができたのでしょうか?それとも・・・
それではまたお便りします。それまでどうぞお元気で。
古賀涼子












